なぜ既婚なのに恋をしたくなるのか?脳と進化心理学で読み解く

既婚でも恋したいと思うのはおかしいのか?脳と進化心理学から考える 大人の恋愛

「結婚しているのに、誰かに惹かれてしまった」「夫に不満があるわけではないのに、別の人と話していると楽しい」「もう一度、恋をしているような気持ちを味わいたい」。

そんな思いを抱いたとき、多くの既婚女性は戸惑います。

「私はおかしいのではないか」「家族がいるのに、こんなことを考えるなんていけない」と、自分を責めてしまう人も少なくありません。

しかし、心理学や脳科学の研究を見ると、結婚後に誰かに惹かれること自体は珍しいことではありません。

恋愛感情は、意志だけで完全にコントロールできるものではなく、脳の報酬系、ホルモン、孤独感、承認欲求、進化的な本能など、さまざまな要因によって生まれます。

もちろん、恋愛感情をどう扱うかは別問題です。しかし、「誰かを好きになること」と、「実際に行動すること」は違います。

大切なのは、感情そのものを否定しすぎず、「なぜ今、自分は恋をしたいと思っているのか」を理解することです。

この記事では、既婚女性が恋をしたいと思う理由を、脳科学、進化心理学、社会学、幸福度研究の視点から詳しく解説します。

既婚でも恋をしたいと思うことは珍しくない

結婚していても他の人に惹かれる人は多い

結婚しているのに他の人に惹かれることは、決して珍しいことではありません。

イギリスの心理学者エスター・ペレル(Esther Perel)は、多くの既婚者が「愛情はあるのに、他の誰かに惹かれる経験」をしていると述べています[1]。

また、日本でも、既婚者向けの恋愛相談や婚外恋愛に関する検索数は年々増えています。

その背景には、夫婦関係の変化、会話不足、セックスレス、孤独感、人生後半の不安などがあります。

特に40代〜50代になると、子育てが落ち着き、自分自身を見つめ直す時間が増えます。

すると、「私はこのままでいいのだろうか」「もう一度、女性として見られたい」と感じる人も少なくありません。

つまり、既婚でも恋をしたいと思うのは、一部の特別な人だけではなく、多くの人が心のどこかで感じる自然な感情なのです。

既婚者が本当に求めているものについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

404 NOT FOUND | Re-Self:

恋愛感情と行動は別の問題

誰かに惹かれたとき、多くの人は「こんな気持ちを持ってはいけない」と自分を責めます。

しかし、感情そのものは、意志だけで完全にコントロールできるものではありません。

脳科学では、恋愛感情は脳の報酬系やホルモンによって生じるとされています。

つまり、「好きになってしまった」という感情自体は、自分の性格が悪いからでも、夫婦関係が必ずしも壊れているからでもありません。

大切なのは、その感情をどう扱うかです。

恋愛感情を持ったからといって、すぐに行動しなければならないわけではありません。

むしろ、「なぜ今、自分はこの人に惹かれているのだろう」と、自分の内面を見つめるきっかけにすることもできます。

人生後半に恋愛感情が強くなることもある

40代以降になると、恋愛感情が強くなる人もいます。

その理由の一つは、「自分自身を取り戻したい」という気持ちです。

子育てや家族のために長年頑張ってきた女性ほど、人生後半になると、「私は妻や母親以外に、どんな人間なのだろう」と考えるようになります。

そのとき、自分を一人の女性として見てくれる相手や、感情を共有できる相手に出会うと、強く惹かれることがあります。

また、更年期前後は、ホルモン変化や老いへの不安から、「まだ女性として見られたい」「魅力を失っていないと感じたい」という欲求が強くなる時期でもあります。

そのため、人生後半の恋愛感情は、単なる刺激ではなく、「自分らしさ」や「生きている実感」を取り戻したい気持ちと深く結びついているのです。

人はなぜ誰かに惹かれるのか

人はなぜ誰かに惹かれるのか

恋愛感情は進化的な本能でもある

人が誰かに惹かれるのは、単なる気まぐれではありません。

進化心理学では、恋愛感情は、人類が子孫を残し、集団を維持するために発達してきた本能の一つだと考えられています。

人は本来、一人で生きるよりも、誰かと結びつくことで安心感を得るようにできています。

恋愛感情が生まれると、相手に強く注意が向き、一緒にいたい、話したい、触れたいと感じます。

これは、長期的なパートナーシップを築き、子どもを育てるために有利だったからだとされています。

つまり、「誰かに惹かれる」という感情自体は、人間に備わった自然な反応なのです。

人は「自分を理解してくれる人」に惹かれやすい

恋愛感情は、見た目だけで生まれるわけではありません。

心理学では、人は「自分を理解してくれる人」「話していて安心できる人」「自分を認めてくれる人」に惹かれやすいことがわかっています。

特に既婚女性の場合、「最近、夫とは感情を共有できていない」「家庭では役割ばかりで、一人の女性として見られていない」と感じているときに、自分を理解してくれる相手が現れると、恋愛感情に発展しやすくなります。

最初は「話しやすい人」「感じがいい人」だったとしても、何度も会話を重ねるうちに、「この人はわかってくれる」という安心感が生まれます。

恋愛は、刺激だけでなく、「理解されたい」という欲求とも深く結びついているのです。

「ないもの」を相手に求めやすい

人は、自分の生活の中で不足しているものを、他人に求めやすい傾向があります。

たとえば、夫婦の会話が少ない人は、よく話を聞いてくれる人に惹かれやすくなります。

家族としてしか見られていないと感じている人は、女性として扱ってくれる相手に惹かれます。

心理学では、これを「補完性」と呼びます。

つまり、恋愛感情は、「その人自身」だけではなく、「自分に足りないものを与えてくれる存在」として生まれることが多いのです。

そのため、誰かに惹かれたときには、「私は今、何が足りないと感じているのだろう」と考えてみることも大切です。

恋愛感情は脳の報酬系で起きる

恋をすると脳内でドーパミンが増える

恋愛感情が生まれると、脳ではドーパミンという神経伝達物質が多く分泌されます。

ドーパミンは、「嬉しい」「もっと欲しい」「また会いたい」と感じさせる物質で、脳の報酬系を活性化させます。

恋をすると、相手から連絡が来るだけで嬉しくなったり、会える日が待ち遠しくなったりするのは、このドーパミンの働きによるものです。


アメリカの人類学者で恋愛研究者のヘレン・フィッシャー(Helen Fisher)は、恋愛初期の脳は、依存症に近い状態になると述べています[2]。

つまり、恋愛感情は単なる気分ではなく、脳の強い反応でもあるのです。

恋愛初期は判断力が下がりやすい

恋愛感情が高まると、人は相手を理想化しやすくなります。

脳画像研究では、恋愛初期には、理性的な判断を司る前頭前野の働きが弱くなり、感情や欲望を司る部位が活発になることがわかっています。

そのため、相手の欠点が見えにくくなり、「この人だけが特別」と感じやすくなります。

既婚者が恋愛感情を持ったときも、現実以上に相手を美化してしまうことがあります。

だからこそ、「今の自分は恋愛脳になっているかもしれない」と一歩引いて考えることが大切です。

恋愛は「生きている実感」を強くする

恋愛をすると、毎日が少し鮮やかに感じられることがあります。

相手からの連絡を待つ時間、会う前の緊張感、何を着ようか考える時間。そうした感覚は、日常に刺激を与えてくれます。

特に、家事、仕事、育児、介護などで、自分のための時間が少なくなっている既婚女性にとって、恋愛感情は「生きている実感」を取り戻すきっかけになることがあります。

脳科学では、新しい刺激や予測できない出来事は、脳の報酬系を活性化しやすいことが知られています。

つまり、恋愛感情が心を動かすのは、単に相手が好きだからだけではなく、「新鮮さ」や「変化」があるからでもあるのです。

結婚後に恋愛感情を求める理由

夫婦関係の中で満たされないものがある

結婚後に恋愛感情を求める人の多くは、夫婦関係の中で何かが不足していると感じています。

それは、会話かもしれません。スキンシップかもしれません。女性として見られること、感謝されること、理解されることかもしれません。

もちろん、夫に大きな不満があるわけではない人も多いです。

けれども、「悪い人ではない。でも満たされない」という感覚は、既婚女性の間でとても多く聞かれます。

そうしたとき、自分を理解してくれる人や、会話が楽しい相手に出会うと、恋愛感情が生まれやすくなります。

セックスレスや孤独感が背景にあることも多い

セックスレスや会話不足が続くと、夫婦は少しずつ“家族”にはなれても、“男女”ではなくなっていきます。

すると、「私は異性として見られていないのでは」「女性として終わってしまったのでは」と感じる人もいます。

その状態で、外で自分を認めてくれる相手に出会うと、「この人といると、自分らしくいられる」と感じやすくなります。

つまり、既婚者の恋愛感情は、単なる刺激を求めているのではなく、孤独や承認欲求の裏返しであることも多いのです。

セックスレスになる理由については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

人生後半は「自分らしさ」を取り戻したくなる

40代〜50代になると、人生後半への不安が強くなります。

子どもが独立し、仕事も落ち着き、これから先の人生を考えるようになると、「私はこのままでいいのだろうか」と感じる人が増えます。

そのとき、恋愛感情は、「まだ自分は終わっていない」「まだ女性として魅力がある」と感じさせてくれるものになります。

そのため、人生後半に恋愛感情が強くなるのは、単なる欲望ではなく、自分らしさを取り戻したいという気持ちの表れでもあるのです。

大切なのは感情を否定しないこと

大切なのは感情を否定しないこと

誰かを好きになること自体は悪くない

既婚であっても、誰かに惹かれること自体は異常ではありません。

感情は、理性だけではコントロールできません。

むしろ、「なぜこの人に惹かれているのか」を理解することで、自分が今、何に寂しさや不足を感じているのかが見えてくることがあります。

感情そのものを否定すると、かえって苦しくなります。

まずは、「私は寂しかったんだ」「女性として見られたかったんだ」と、自分の気持ちを認めることが大切です。

既婚女性が女性として見られたいと感じる理由については、こちらの記事も参考になります。

恋愛感情を自分自身の理解につなげる

恋愛感情は、ときに自分自身を見つめ直すきっかけになります。

なぜ今、この人に惹かれているのか。自分は何を求めているのか。夫婦関係の中で足りないものは何なのか。

そうしたことを考えることで、自分の本当の気持ちが見えてくることがあります。

恋愛感情は、必ずしも「誰かと付き合うべき」という意味ではありません。

自分の人生や夫婦関係を見直すサインとして捉えることもできるのです。

必要なのは「感情」と「行動」を分けて考えること

誰かに惹かれることと、実際に行動することは違います。

感情は自然に生まれますが、その後どうするかは、自分で選ぶことができます。

大切なのは、衝動的に動くのではなく、「自分は本当は何を求めているのか」を理解することです。

夫婦関係を見直したいのか、自分の居場所が欲しいのか、女性としての自信を取り戻したいのか。

その答えが見えてくると、感情に振り回されにくくなります。

Q&A

Q
既婚なのに恋したいと思うのはおかしいことですか?
A

結論から言うと、決しておかしいことではありません。人が誰かに惹かれる感情は、理性だけで完全にコントロールできるものではなく、脳の仕組みや本能的な要因によって自然に生まれます。

脳科学の研究では、恋愛感情はドーパミンなどの神経伝達物質によって引き起こされる「報酬反応」の一種とされています。たとえばヘレン・フィッシャーは、恋愛初期の脳は依存状態に近い働きをすると説明しています。

また、進化心理学の観点からも、人が誰かに惹かれるのはごく自然な反応です。結婚しているかどうかに関係なく、「つながりたい」「理解されたい」という欲求は誰にでも存在します。

大切なのは、「恋したいと思ったこと」自体を責めるのではなく、その感情が生まれた背景を理解することです。

Q
夫に不満がなくても他の人に惹かれるのはなぜですか?
A

夫に大きな不満がなくても、他の人に惹かれることは十分にあります。その理由の一つは、「満足」と「充足」は別のものだからです。

たとえば、夫婦関係が安定していても、「会話が少ない」「感情を共有できていない」「異性として見られていない」と感じている場合、心のどこかで満たされていない部分が生まれます。

心理療法家のエスター・ペレルは、長期的な関係では「安心」と引き換えに「刺激」や「欲望」が弱まりやすいと指摘しています。

そのため、外で自分を理解してくれる人や、楽しく会話できる相手に出会うと、「この人といると自分らしくいられる」と感じ、恋愛感情に発展することがあります。

つまり、他の人に惹かれるのは「夫を愛していないから」ではなく、「別の形の満たされ方」を求めている可能性が高いのです。

Q
なぜ40代・50代で恋愛感情が強くなることがあるのですか?
A

40代・50代は、人生の転換期にあたるため、恋愛感情が強くなりやすい時期です。

子育てが一段落し、自分の時間が増えることで、「私はこのままでいいのか」「自分の人生をどう生きたいのか」と考える機会が増えます。このとき、「一人の女性として見られたい」「まだ魅力があると感じたい」という欲求が強くなることがあります。

さらに、更年期によるホルモン変化や老いへの不安も影響します。これらは自己肯定感を揺らしやすく、「誰かに認められたい」「必要とされたい」という気持ちを強めます。

この時期の恋愛感情は、単なる刺激ではなく、「自分らしさ」や「生きている実感」を取り戻すための心理的な動きであることが多いのが特徴です。

Q
恋愛感情を持ったとき、どう向き合えばいいですか?
A

まず重要なのは、「感情」と「行動」を分けて考えることです。誰かに惹かれる気持ちは自然に生まれますが、その後どうするかは自分で選ぶことができます。

感情を無理に抑え込むと、かえって強くなったり、罪悪感につながったりします。そのため、「なぜ自分はこの人に惹かれているのか」を冷静に見つめることが大切です。

たとえば、「会話が足りていなかった」「女性として見られたかった」「安心できる居場所が欲しかった」など、自分の内面のニーズが見えてくることがあります。

こうした気づきは、必ずしも新しい恋愛に進むためではなく、夫婦関係や自分の生き方を見直すヒントにもなります。

恋愛感情は「行動のきっかけ」ではなく、「自己理解のサイン」として活かすこともできるのです。


参考文献

[1] Esther Perel『Mating in Captivity』2006年

[2] Helen Fisher『Why We Love』2004年

[3] Helen Fisher et al. “Romantic Love: An fMRI Study of a Neural Mechanism for Mate Choice” 2005年

[4] John Cacioppo『Loneliness』2008年

[5] Robert Waldinger, Marc Schulz『The Good Life』2023年

[6] 内閣府「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」2023年 https://www.cao.go.jp/kodoku_koritsu/torikumi/zittai_chousa.html

[7] John Gottman『The Seven Principles for Making Marriage Work』1999年

■本記事で参考にしている海外研究者の略歴、業績

  • エスター・ペレル(Esther Perel、ベルギー出身の心理療法家・夫婦関係研究者)
    ベルギー生まれの心理療法家で、長期関係における性愛と親密性を研究。『Mating in Captivity』では、安心感と性愛は必ずしも両立しないことを示し、世界的な夫婦カウンセリングの専門家として知られる。
  • ヘレン・フィッシャー(Helen Fisher、アメリカの人類学者・恋愛研究者)
    ラトガース大学教授を務め、恋愛・性愛・愛着を脳科学と進化心理学の視点から研究。fMRIを用いて恋愛中の脳活動を分析した先駆者で、『Why We Love』では恋愛感情とドーパミンの関係を示した。

執筆者

Re-Self編集部

夫婦関係、恋愛心理、幸福度、人間関係をテーマに、心理学、脳科学、社会学などの研究や各種の調査データをもとに、自分らしく生きるためのヒントを発信しています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました