結婚しているのに孤独を感じる理由|心理的孤独はなぜ起きるのか

結婚しているのに孤独を感じる理由|心理的孤独はなぜ起きるのか Loneliness

「夫はいる。子どももいる。家族もいる。それなのに、なぜかずっと寂しい」――そんな気持ちを抱えたことはないでしょうか。

結婚しているのに孤独を感じることに、罪悪感を持つ女性は少なくありません。「家族がいるのに孤独なんて贅沢では」「もっと大変な人もいるのだから」と、自分の寂しさを否定してしまう人もいます。

けれども、孤独は一人でいることではありません。誰かと一緒にいても、「理解されていない」「気持ちをわかってもらえない」と感じると、人は強い孤独を抱えます。

実際、近年の研究では、配偶者がいても孤独感を感じる人は少なくなく、特に既婚女性は、会話不足、感情共有の少なさ、役割負担の偏りによって、心理的孤独を抱えやすいことがわかっています。

この記事では、結婚しているのに孤独を感じる理由を、心理学、脳科学、精神医学、社会学の視点から詳しく解説します。

結婚しているのに孤独を感じる人は多い

配偶者がいても孤独感は消えない

「孤独」というと、一人暮らしや独身の人が感じるものだと思われがちです。しかし、実際には、結婚していても孤独を感じる人は少なくありません。

内閣府の「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」では、「しばしば・常に孤独を感じる」と答えた人は既婚者にも一定数存在していました[1]。特に、配偶者との会話が少ない人、家庭内で役割負担が偏っている人、相談できる友人が少ない人は、孤独感が強くなる傾向があります。

結婚は、孤独を完全に消してくれるものではありません。むしろ、「本来なら一番わかってほしい相手」に理解されないとき、人は独身時代よりも深い孤独を感じることがあります。

特に既婚女性は、家族のケア役を担うことが多く、自分の気持ちを後回しにしがちです。そのため、周囲からは恵まれているように見えても、内面では「誰にもわかってもらえない」と感じている人が少なくありません。

既婚女性はなぜ孤独を抱えやすいのか

既婚女性が孤独を感じやすい背景には、家庭内での役割負担があります。

日本では、共働き世帯が増えているにもかかわらず、家事や育児の負担は今も女性側に偏りやすい傾向があります。総務省の社会生活基本調査では、共働き家庭でも女性の家事・育児時間は男性の数倍にのぼることが示されています[2]。

そのため、女性は「家族のために動く人」になりやすく、自分の悩みや感情を話す機会が減っていきます。

また、男性は問題解決型の会話を好む傾向がある一方で、女性は共感や感情共有を求める傾向があるといわれています。夫婦の会話が「解決策」だけになり、「気持ちをわかってほしい」という欲求が満たされないと、女性は孤独感を抱きやすくなります。

つまり、既婚女性の孤独は、単なる一人の時間の多さではなく、「気持ちを話せない」「感情を共有できない」ことから生まれるのです。

人生後半ほど孤独感が強くなることもある

40代、50代、60代になると、孤独感はさらに強くなることがあります。

子どもが成長して手が離れたり、親の介護が始まったり、更年期による心身の変化があったりと、人生後半は大きな変化が重なる時期です。

これまで「母親」「妻」として忙しく過ごしてきた女性ほど、ふと時間ができたときに、「私は何のために生きているのだろう」「自分の気持ちを話せる人がいない」と感じやすくなります。

ハーバード大学の成人発達研究では、人生後半の幸福度を左右する最大の要因は、収入や社会的地位ではなく、「親しい人との関係の質」だと報告されています[3]。

つまり、人生後半の孤独を防ぐためには、家族以外も含めて、自分の気持ちを話せる人間関係を持つことが重要なのです。

孤独は一人でいることではなく理解されないこと

孤独は一人でいることではなく理解されないこと

誰かと一緒にいても孤独は起きる

孤独は、一人でいるときだけに感じるものではありません。

たとえば、夫婦で同じ家に住み、毎日顔を合わせていても、「自分の気持ちを話せない」「話しても理解されない」と感じると、人は強い孤独を抱えます。

精神科医ジョン・カシオッポは、孤独とは「社会的なつながりが足りない状態」ではなく、「自分が望むつながりと、実際のつながりとのギャップ」であると説明しています[4]。

つまり、周囲に人がいるかどうかではなく、「わかってもらえている感覚」があるかどうかが重要なのです。

そのため、夫や子どもがいても、自分の悩みを言えない、弱音を吐けない、共感してもらえないと感じると、人は一人でいる以上に孤独になります。

共感されないことが孤独を深くする

女性が孤独を感じる場面で多いのが、「話を聞いてもらえなかった」「気持ちを軽く扱われた」と感じる瞬間です。

たとえば、「最近つらい」と言ったときに、「考えすぎだよ」「みんなそんなものだよ」と返されると、自分の感情が否定されたように感じます。

共感とは、問題を解決することではありません。「それは大変だったね」「つらかったね」と気持ちを受け止めてもらうことです。

心理学では、人は感情を共有してもらうことで安心感を得ると考えられています。

逆に、気持ちをわかってもらえない経験が積み重なると、「どうせ話しても無駄」と感じ、さらに孤独が深まっていきます。

孤独は「甘え」ではない

孤独を感じている人の中には、「こんなことで寂しいと思う私は弱いのでは」「もっと頑張らなければ」と自分を責める人がいます。

しかし、孤独は甘えではありません。

人間は進化の過程で、集団の中で生きるようにできています。そのため、「誰にも理解されない」「居場所がない」と感じると、脳は危険信号を出します。

精神医学では、慢性的な孤独は、うつ、不安障害、不眠、アルコール依存、食欲低下などのリスクを高めるとされています。

つまり、孤独を感じること自体は自然な反応であり、決して弱さではありません。

むしろ、「自分は孤独を感じている」と認識できることは、自分を守るための第一歩でもあります。

脳は孤独を身体的痛みとして感じる

孤独は脳にとって危険信号

脳科学では、孤独は単なる感情ではなく、生存に関わる重要なサインと考えられています。

人類は長い歴史の中で、集団の中で生き延びてきました。そのため、仲間から切り離されることは、命の危険につながっていました。

その名残として、現代の脳も「孤独」を危険信号として認識します。

脳画像研究では、孤独を感じたときには、身体的な痛みを感じるときと同じ前帯状皮質という部位が活性化することがわかっています[5]。

つまり、「誰にもわかってもらえない」という苦しさは、気のせいではなく、脳が本当に“痛み”として感じているのです。

孤独が続くと心身に悪影響が出る

孤独感が長期間続くと、心だけでなく身体にも悪影響が出ます。

アメリカの研究では、慢性的な孤独は、高血圧、心疾患、認知症、免疫力低下、睡眠障害などのリスクを高めることが報告されています[6]。

また、孤独を感じると、ストレスホルモンであるコルチゾールが増えやすくなります。コルチゾールが慢性的に高い状態が続くと、疲労感、集中力低下、イライラ、抑うつ感が強くなります。

「最近ずっと疲れている」「よく眠れない」「小さなことで落ち込む」という状態の背景に、実は孤独感が隠れていることも少なくありません。

夫婦関係は幸福度に大きく影響する

人間関係の中でも、配偶者との関係は幸福度に大きく影響します。

ハーバード大学の成人発達研究では、「良い人間関係」が健康と幸福を支える最大の要因だと報告されています[3]。

特に、夫婦関係が良好な人は、ストレスに強く、老後の幸福度も高い傾向があります。

逆に、会話が少ない、感情共有がない、否定的な言葉が多い夫婦は、同じ家にいても孤独感を感じやすくなります。

つまり、孤独を防ぐためには、夫婦の会話や関係性を見直すことが大切なのです。

孤独感が強くなる夫婦の特徴

会話が必要最低限しかない

孤独感が強い夫婦には、会話が少ないという特徴があります。

話す内容が「子どもの予定」「お金」「家事」だけになっていると、感情の共有がなくなります。

一緒に暮らしていても、自分の悩みや不安を話せない状態では、「誰にもわかってもらえない」という気持ちが強くなります。

特に女性は、日常の小さな会話や雑談を通じて安心感を得る傾向があります。そのため、夫婦の会話量が少ないと、孤独感が強まりやすくなります。

感謝や承認の言葉が少ない

夫婦関係が長くなると、「ありがとう」「助かるよ」「頑張っているね」といった言葉が減っていきます。

けれども、人は誰でも、自分の存在を認めてもらいたい生き物です。

家事や育児、仕事をしても当たり前のように扱われると、「私は何のために頑張っているのだろう」と感じやすくなります。

ジョン・ゴットマンは、夫婦関係では、ポジティブな言葉がネガティブな言葉の5倍必要だと述べています[7]。

感謝や承認の言葉が少ない夫婦ほど、孤独感は強くなりやすいのです。

外に自分の居場所がない

夫婦関係だけに依存している人ほど、孤独感が強くなりやすい傾向があります。

たとえば、友人が少ない、趣味がない、仕事以外の人間関係がない場合、夫との関係がうまくいかないと、一気に孤独感が強くなります。

逆に、趣味の仲間、友人、コミュニティ、仕事仲間など、家庭以外にも居場所がある人は、孤独を感じにくい傾向があります。

最近は、既婚者同士が趣味や価値観でつながる場や、人生後半の生き方について話せるコミュニティに関心を持つ女性も増えています。

家族だけに全てを求めず、自分らしくいられる場所を持つことが、孤独を防ぐ鍵になります。

孤独を軽くするために必要なこと

孤独を軽くするために必要なこと

自分の気持ちを言葉にする

孤独を軽くする第一歩は、自分の気持ちを認めることです。

「寂しい」「わかってほしい」「もっと話したい」と感じているなら、その気持ちを否定しないことが大切です。

我慢を続けると、孤独は怒りや諦めに変わっていきます。

まずは、自分自身に「私は寂しかったんだ」と認めること。そして、できれば相手にも少しずつ言葉にして伝えることが大切です。

家族以外の人間関係を持つ

孤独を減らすためには、夫婦関係だけに頼りすぎないことも大切です。

友人、趣味仲間、仕事仲間、地域のコミュニティなど、家族以外にも話せる相手がいると、気持ちはかなり楽になります。

特に40代以降は、子育てが落ち着き、自分の時間が増える時期でもあります。

習い事を始める、読書会に参加する、趣味の集まりに行く。そうした小さな行動が、自分らしさを取り戻すきっかけになることがあります。

夫婦の会話を少しずつ増やす

孤独感を根本から軽くするためには、夫婦の会話を増やすことも必要です。

いきなり深い話をする必要はありません。

「今日どうだった?」「疲れていない?」といった小さな会話を重ねるだけでも、安心感は変わります。

夫婦関係は、劇的な出来事よりも、日々の小さな言葉の積み重ねで変わっていきます。

少しずつでも、感情を共有する時間を増やしていくことが、孤独を和らげる一番の近道なのです。

Q&A

Q
結婚しているのに孤独を感じるのはおかしいですか?
A

おかしくありません。結婚していても、理解されない、話を聞いてもらえないと感じると、人は孤独になります。

Q
既婚女性はなぜ孤独を感じやすいのですか?
A

家事や育児、感情労働を担うことが多く、自分の気持ちを後回しにしやすいためです。

Q
孤独感は心や体に影響しますか?
A

はい。孤独感が続くと、不眠、抑うつ、ストレス、高血圧などにつながることがあります。

Q
孤独を減らすにはどうすればよいですか?
A

自分の気持ちを認めること、家族以外の人間関係を持つこと、夫婦の会話を増やすことが大切です。


参考文献

[1] 内閣府「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」2023年 https://www.cao.go.jp/kodoku_koritsu/torikumi/zittai_chousa.html

[2] 総務省「社会生活基本調査」2021年 https://www.stat.go.jp/data/shakai/2021/index.html

[3] Robert Waldinger, Marc Schulz『The Good Life』2023年

[4] John Cacioppo『Loneliness』2008年

[5] Naomi Eisenberger et al. “Does Rejection Hurt? An fMRI Study of Social Exclusion” 2003年

[6] Julianne Holt-Lunstad et al. “Loneliness and Social Isolation as Risk Factors for Mortality” 2015年

[7] John Gottman『The Seven Principles for Making Marriage Work』1999年


執筆者プロフィール

ペンネーム:凪沢ゆかり

夫婦関係、既婚女性の孤独、人間関係、人生後半の生き方をテーマに執筆するライター。心理学、脳科学、家族社会学の研究や調査をもとに、女性誌風の読みやすい記事を手がけている。

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