ダブルバインドの意味とは?具体事例と抜け出し方の考察

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ダブルバインドとは、ベイトソンが子供の統合失調症の原因として唱えた心理学的な言葉です。

日本語では「二重拘束」と呼ばれ、2つの矛盾した命令を同時に受けた相手がジレンマに陥り、ストレス状態になるコミュニケーションのパターンとなっています。

今回は、モラハラやパワハラの手法、また一方で催眠療法としても使われているダブルバインドの概念を親子上司社会的グローバルの事例や禅の公案などを具体例に挙げて分かりやすく説明し、最後にダブルバインドからの抜け出し方も考察していきます。

ダブルバインドとは

ダブルバインド(二重拘束)とは、グレゴリー・ベイトソン(米国文化人類学者)の論文『精神分裂病の理論化に向けて』(1956年)の中で提唱された概念です。

ベイソンは、ダブルバインドによる心理的葛藤状態が統合失調症(当時は精神分裂病)の原因になると考えました。

ベイトソンの理論によれば、ダブルバインドは以下6つの条件によって発生します。

ダブルバインドの定義と6つの条件

※ダブルバインドを与える側=加害者・受ける側=被害者

  1.  2人以上の関係で、その内の1人が被害者(対象者)となる
  2.  ダブルバインドには、繰り返し経験される解決不能なテーマがある
  3.  一次命令:最初に加害者は「○○しろ⇒さもないと罰する」「××するな⇒さもないと罰する」のいずれかのパターンで否定的メッセージを出す
  4.  二次命令:次に、最初の命令と矛盾し、両立できない*メタメッセージを出す
  5.  三次命令:加害者は必要に応じて、二重拘束からの逃避を禁止する命令を出す
  6.  被害者がダブルバインドを認知した世界観を持つようになる

メタメッセージとは、あるメッセージが伝えるべき本来の意味を超えて、別の意味を伝えること。言語化されない暗示的メッセージ。メタ=高次、超えたもの。ダブルバインドと同様にベイトソンによって唱えられた概念。

一般的にダブルバインドの加害者となるのは、親、先生、上司など対象者に対して権威を持つ人物です。

被害者には権威を持つ加害者に対して疑問を持つべきではないという暗黙のルールが存在します。

ベイトソンは、特に子供に対するダブルバインドが深刻な心理的ダメージを与えると考えました。

2つの矛盾した命令に従わない場合、愛情放棄、怒り、憎しみ、見捨てられるなどの罰が与えられます。

ベイトソンは、6つの条件にピタリとハマればどんなタイプの人間も言葉の判断能力が低下してしまうと述べています。

否定的ダブルバインドとは

ベイトソンが提唱した葛藤状態を生じるダブルバインドは否定的ダブルバインドとも呼ばれています。

加害者が被害者を生むパターンです。パワーハラスメントやモラルハラスメントの原因となるダブルバインドもこれに該当します。

ダブルバインドは、被害者に強い心理的ストレスを生じさせます。

しかし、ベイトソンが仮説を立てたダブルバインドと統合失調症の因果関係は現在も確立されてはいません。

現代医学では遺伝的、神経学的な要因も統合失調症の原因と考えられ、因果関係の証明もより複雑化してきているからです。

近年ダブルバインドの概念は幅を広げ心理療法やビジネスなどの分野で応用されています。

ベイトソンの相談役であったミルトン・エリクソンは、ダブルバインドを催眠療法に応用し治療的ダブルバインドを提唱。エリクソニアン・ダブルバインドとも呼ばれています。

*治療的ダブルバインドの詳細については次の記事をご参照ください!

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次にダブルバインド(否定的)の具体例を家庭(親子)・会社(上司)・社会・グローバルのカテゴリーに分けて説明します。

ダブルバインド親子の事例

親子ダブルバインド

ダブルバインド理論を提唱したベイトソンは、親から子供への二重拘束を最重視していました。

親子間での典型的な事例として、母親が自分の子供に「愛してる」と言いながら、その子に嫌気がさし、そっぽを向いたり、躾(しつけ)と称して、体罰を与えたりすることがあります。

子供は、母親が発する言葉と身振りとのギャップから生じる矛盾にどう反応して良いのか分かりません。

子供は基本的に母親に依存して生きているので、ダブルバインド状態から逃げることも出来ずに困惑します。

特に小児は、親の矛盾点を言葉で指摘することが出来ないので混乱するばかりです。

親が子供に使ってしまうダブルバインドには次のような例があります。

〈例1〉
「親の言うことを聞けないなら、もう勝手にして!」

「勝手なことするなら、もう親子の縁を切るわよ!」

〈例2〉
「なんで親にひと言相談しなかったの?」

「そんなこといちいち相談しないで自分の頭で考えなさい!」

〈例3〉
「どうしてそんなことしたの?」

「言い訳いうんじゃないわよ!」

上記のように矛盾したメッセージを同時に受け取った子供は、どちらのメッセージに従ったとしても結果的に叱られてしまいジレンマに陥ります。

子供には、会社員のように退職してダブルバインド状態から抜け出すという選択がありません。

親子間のダブルバインドは、親が無自覚に否定的メッセージを送り続ける場合が多く、長期間に渡れば子供の自立心や主体性、自己肯定感までも奪ってしまうでしょう。

ダブルバインド上司の事例

ダブルバインド上司

モラハラ上司とは、言葉や態度によって嫌がらせをして、部下を精神的暴力で追いつめる上司のことです。(モラハラ=モラルハラスメント)

職場の上下関係を使って嫌がらせをするパワハラもモラハラのカテゴリーに分類されます。

モラハラの手段として否定的ダブルバインドがよく使われます。

これには上司の部下に対する支配欲が根深く絡んでいることもあります。

また、自分の気に入らない部下を負のループに落とし込んで愉快に感じてる場合もあるでしょうが、必ずしも悪意があるとは限りません。

会社によくいるダブルバインド上司には以下のようなケースがあります。

〈例1〉
「業務に関しては何でも報告するように」

「こんなことでいちいち報告してくるな!」

〈例2〉
「分からないことは何でも私に相談するように」

「そんなことは自分で調べて判断しろ!」

〈例3〉
「どうして契約が取れなかったんだ?」

「言い訳せずにさっさと取ってこい!」

上記のケースではどちらの指示に従っても上司から怒られてしまいます。上司も悪意

ダブルバインド上司から逃れる方法としては退職するのが一番ですが、「とりあえず3年働け」のフレーズに縛られて辞めれない新入社員も多いかと思います。

モラハラやパワハラによるストレスも長期間続けば、生真面目でため込むタイプの人は特に心理的に追いつめられてウツ状態になってしまいます。

自分が破滅するくらいなら、そうなる前に勇気を出して関係を断ち切った方が健全です。

次は、個人間の枠を超えた社会的ダブルバインドグローバルダブルバインドの概念について説明します。

社会的ダブルバインドとは?

ダブルバインドは個人間のみならず社会的、世界的規模でも存在しています。

家庭や会社の集合体である社会の中にも矛盾したメッセージを見つけることが出来ます。

社会的ダブルバインドとは

社会的ダブルバインドとは、グレゴリー・ベイトソンの末娘ノラ・ベイトソン編集映画『An Ecology of Mind(2010)』の中でカリフォルニア州知事ジェリー・ブラウンが唱えました。

 ブラウン知事は、今私たちは社会的不平等な状況にいることに気づいているという。提案された解決策は経済成長である。しかし、経済成長を求めた結果、富裕層がより豊かになり、さらなる不平等を生んでいる。どうにかしてこの矛盾を内包した意識レベルから抜け出さなくてはならないだろう。

Brown says that we now find ourselves in a situation of social inequality. The proposed solution is to grow the economy. However, the result of growing the economy is more inequality (the rich get richer). Somehow we must break out of the level of consciousness that contains this contradiction.

ブラウン知事の指摘した社会的ダブルバインドには、次の2つの矛盾したメッセージを含まれています。

「社会的不平等を解決するには経済成長が必要」

「経済成長は、富裕層をより豊かにし貧困層をより貧しくする」

これに対しノラ・ベイトソンは、国民が社会的ダブルバインド状態に疑問を投げかけ意識を高めることが、健全な社会へと向かう重要な第一歩だと提案しています。

グローバルダブルバインドとは

グローバルダブルバインドとは、地球の生態系などより大きな枠で生じるダブルバインドです。

〈グローバルダブルバインド事例〉
「私たちは美しい自然環境を守りたいと願う」

「経済成長を促し生活水準を維持するために自然環境を破壊する」

経済のグローバル化に伴い、生産拠点となっている多くの国々で自然環境の破壊が行われています。

美しい自然環境を守りたいという想いはあるが、現代的な便利さや豊かさを維持したいという欲求が、結果的に環境破壊を進めてしまうという矛盾。

このように家庭、職場、社会、グローバルと様々なスケールでダブルバインドが存在しています。

グレゴリー・ベイトソンは、人間は自然生態系と自分たちの生活との間に*相互依存性を感じていないので、壊れやすい環境に対して破壊的になってしまうのだと考えました。
*お互いに、相手がいなければ物事が成り立たないような状況にあるさま。(Weblio辞典参照)

親子、上司から部下へのダブルバインドも同様に立場の弱い相手に対して相互依存性が欠如しているからできる行為だと言えるでしょう。

グレゴリー・ベイトソンは上記で挙げた否定的ダブルバインドを説く一方、治療効果が期待できる肯定的ダブルバインドについても述べています。

禅の公案と肯定的ダブルバインド

禅の公案イメージ

グレゴリー・ベイトソンは、禅の公案禅問答)とダブルバインドとの間に類似性を見出しました。

公案とは修業目的のコミュニケーションで、師匠が弟子に矛盾したメッセージを与え、弟子がそれに立ち向い固定観念の壁を破った時に悟りに導かれます。

ベイトソンは、ダブルバインドも禅の公案と同じような効果があると考え、これを肯定的ダブルバインドと呼び精神治療への活用を試みました。

〈ベイトソンが引用した公案〉
師匠は弟子の頭に棒をかざして厳しい口調でこう言います。
1.この棒が現実にここにあると言うのなら、これでお前を打つ。
2.この棒が実在しないと言うのなら、これでお前を打つ。」
3.何も言わなければ、これでお前を打つ。」

この公案は、ベイトソンが提示したダブルバインドの条件にピタリと当てはまります。
「1.一次命令」:最初の否定的メッセージ
「2.二次命令」:最初と矛盾したメタメッセージ
「3.三次命令」:二重拘束からの逃避を禁止

この場合、棒が実在するかしないかに囚われてる限り、弟子はダブルバインドから逃れることが出来ません。

しかし、弟子は、コミュニケーションのレベルを変えその枠組みから抜け出すことで、問題の解決策を見出しました。

弟子は師匠に歩み寄り、棒を奪い取ってへし折ったのです!

この公案には、ダブルバインドから抜け出す2つの方法が示されています。

先ず2つの矛盾する命令に隠れた共通の理由(棒という概念)を見つけそれを手放す(放棄する)

個人的にしても、社会的にしても解決困難な問題の多くはダブルバインドになっています。

「あちらを立てれば、こちらが立たず、逃げることもできない」

もし、ダブルバインドに正面から向き合って乗り越えようと思っても、その枠にハマってる状態では解決の糸口は見えてきません。

ダブルバインドを俯瞰して抜け出す

俯瞰のイメージ

一度、二重拘束の枠の外に出て葛藤となる問題を俯瞰することです。今まで考えたこともなかったダブルバインドから抜け出す画期的な方法が見えてくるかもしれません。

問題を俯瞰するとは、問題が生じた時と同じ目線から離れて、空高く飛んでいる鳥の目線のように自分自身と周りの環境を含めた全体像を捉えることです。

俯瞰の具体的方法としては、次のようなイメージング法があります。

・先ず目を閉じて…

・自分がその出来事に対して抱いている感情をしっかり感じ切ります。
 *感情に蓋をしようとすればするほど、その感情は逆に育ってしまいます。

・次にもう一人の自分が鳥になって現状の自分を見下ろしながら上空に飛び立つイメージを浮かべます。

・豆粒のようにだんだん小さくなっていく自分を眺めています…

・その自己イメージを客観的に捉えて次の質問をしてください。

・「自分はこの目の前の現実から何を学んでいるのか?」

・「これからどうすればいいのか?」

問題に対して自分が抱く感情を癒着させずに俯瞰しながら上記の質問すれば、無意識はその空白を埋めるためその答えを探し始めます。

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最後に問題解決の核心をつくアルバート・アインシュタインの名言をご紹介します。

問題を起こした時と同じ思考では、その問題を解決することはできない。 
We can’t solve problems by using the same kind of thinking we used when we created them.

※ミルトン・エリクソンが心理療法に多用した治療的ダブルバインドは次の記事をご参考下さい!

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